1969年の秋から暮れにかけて、予備校の近くのレコード屋に「藤圭子」という歌手がキャンペーンに来た。「新宿の女」というシングル盤のキャンペーンである。当時の僕はロックマニア(今でもそうですけど)で演歌なんて忌み嫌っていた。演歌は日本の癌であるとまで言い切っていた。・・この藤圭子さんですが、なんというかそれまでのレコード屋に来たキャンペーンの歌手さんとは違って摩訶不思議な雰囲気を持っておられました。「買ってください」でなくって「気に入ったら買ってください」。この違いは大きいあつかましさが全くなかった。で、そこで僕が買ったかというと実は買っていない。さすがに演歌は買えなかった。その後1年ぐらい経って大ブレイクしてロック少年が藤圭子だけは別というファンになってしまう。当時、僕だけでなく同じような奴がいっぱいいた。藤圭子以外はロックしか聞いていなかった連中は周りにいっぱいいた。
偶然であるが、村上春樹のエッセイに村上春樹がレコード屋でバイトしていた時に売れているか気にして見に来る本人(藤圭子)のことが書かれている。村上春樹も不思議な雰囲気を感じている。同じ頃の話である。
0 件のコメント:
コメントを投稿