2021/11/25

ロックの歴史の書籍について


 昨日紹介した「みのミュージック」の「みの」さんが上記の本を出しているので早速読んでみた。
今までもこの手の本はまあ「まともそうなもの」は読んできたつもりで、書かれてある事実に対しては、よく調べて勉強してるなという印象、なにせ1990年生まれですからね。

でこの手の本の特徴は、著者がすべてについて詳しいというより、ある一部の思い入れのある分野があってそこについては滅茶苦茶詳しいけどあとはいい加減(ほぼパクり)というようなものが多い。
それならそこの部分だけ書けよといいたいけど、それではロック史にならんというわけですね。
そういう意味では、この本、ある意味「中道路線」で贔屓なしのように思う。
多分ここは「あそこからもってきたのね」と思うところはあるけれど、そんなこと言えば僕の文章は貰い物のつぎはぎだらけですから。
AMAZONのレヴューなどには「〇〇が抜けている」という書き込みがありますが、これは書き込んだ人が気に入っているジャンルがなかったからわかるだけなので、なかなか難しい話だと思う。世界の音楽をすべて網羅しているって誰が分かる??ということになる。
思えば昔、プログレもイギリスからスタートして、アメリカ、イタリア、ドイツ果てはブルガリア、北欧と世界中のプログレを集めているレコード屋が出て来たけれど、こうなると消化不良かつ満腹。

ロックの歴史といえば三井徹さんの書いた「戦後洋楽ポピュラー史」という大作がありますが、これは資料としては一流で、ここには三井さんの気持ちを極力排除して書かれていて、初めは物足りませんでしたが、今資料的に読むことが多く、気持ちを排した趣旨に賛同することしきりです。
特に、戦争が終わって、それまで敵国の堕落した音楽と言われていた音が突然ラジオでかかりだす。軽音楽、ポピュラー、ラテン、ボサノバ・・・もう氾濫状態、そのあたりの情景が雑誌、新聞、広告・・という媒体を通じた証拠によって実証されて行きます。実に念入りな作業で感心してます。
ポイントは日本の戦後に絞り、洋楽に絞り、マスコミに出たもの及び大衆が知ることができたもの・・に限定していることが格調を高めているのだと思う。


中山康樹さんのロック史になるといわゆる中山節がさく裂して、別の意味で面白い。ヒット曲、流行ったサウンドの脈絡の因果関係を独善的?な仮説をたてて理論づけをするというもので、さすがと思えるところが魅力。
僕は、徹底した資料路線か卓越した推論路線かしか価値あるロック史はないかなと思ってきている。
御大中村とうようさんも岩波新書から上記の本を出している。当然ながらロックも一つのジャンルにすぎませんが、様々な音がロックに集結してきた時代に書かれている。
1969年のニューミュージックマガジン創刊の頃は「これからはロックだ」というロック最高潮の時代だったので「そうだ!そのとおりだ」と思っていたけれど、今から考えたら非常に特殊な時代であったことが分かってきた(当たり前ですけどね)。
この本は1999年に書かれていて、絶好調だったロックの時代が終わり、ではロック以降どこに行くの?何が出てくるの?という展望で終わっている。ここに至れば「これだ」という力強い「とうよう節」は影を潜めている。この本以降の20年で再考が必要。

そういう意味で、一番上の「みのミュージック」の「みの」さんに移っていくわけ。
こういうロック史書いている人って、僕の同世代が多く、今となれば思い出に浸っている感じもしないでない。「昔は良かった」路線で、ロックの時代以降の考察はいまいちというかどうでもいい感じ。正直ヒップホップなんてわからんもんね。
というわけで、同世代の書くロック史でなく、若い人の書くロック史が出たのは非常にいいことだと思っている。


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