2021/03/04

中村とうようさんの「フォークからロックへ」


 
ニューミュージックマガジンを読みだした翌年(1970)になんとか大学に受かり、一応無難な経済系の学部に入ったものの、その頃は「音楽評論家」(みたいなもの)になりたいと思っていた(だいそれた考えです)。
それで当時の目標は「中村とうよう」さんで、恰好よかった。学歴は京大で、一流銀行をドロップアウト、信念ありそう、時流に乗っている、ボブディランをはじめ先見の目がある、企業(出版社)を起こしている・・・等々。
具体的なあこがれではないけれど、僕自身が歌えない(音痴)、楽器弾けない(音痴・鈍感)、ただ文才はあるかもしれない(作文コンクールには何回か入賞していた、但し小学校の頃)ので書けるかもしれない。こんな思いからまずこの周辺の本を読もうと思って集めだした。
それで、まずアップした「フォークからロックへ」という小冊子を読み始めた。出版元が「主婦と生活社」というロックとどういう関係があるのかようわからん会社から出ていて大丈夫かなと思いつつ、ちょっと違和感を感じながら読み始めました。
僕はビートルズから1967-69年の「ロック時代」に導かれてきたわけですけど。とうようさんはボブディランに導かれてきたように思えます。(その導線も多いように思います。忌野さんとか、岡林さんとかハッピーエンドとかも僕にはそう思える)
先日、どっかのブログで萩原健太さんが「ロック」という現象は1967-69年の3年間だけの一瞬の現象のように思う云々の記事を読みましたが、「なるほど」その通りかもしれないと今頃(何年経ってるんや!)実感として感じた次第。その3年間の「幻想」が今も残っている。
この1967-69年の3年間という時期に「生活様式」「思想とも呼べないちょっとした考え方」等々、百花繚乱入り乱れて「ロックの時代」を形成してきたわけです。
音楽的にはロックンロール、フォーク、ブルース、クラシック・・要は何でもありだったように思う。
とうようさんは、当時はことのほか「ブルース」に愛着があったらしく、「ニューロック」「アートロック」で僕たち引き寄せて、ブルースに開眼させようと思っていたみたい。僕は正直、ブルースにそれ程入れ込むことがなくって、ツエッペリン程度にちょこっとブルースっぽいのが好きで、もろ「ブルースです」というのは苦手だった。ロバート・ジョンソンも聞いたし、なんとかキング(何人かいらっしゃった)、マジック・サムとかも聞きましたが、変な言い方ですが、本物より白人の偽物の方が心地よかった。だから本物と言われるブルースのレコードはあんまり持っていない。
脱線しますが、ウォルター・ヒル監督の「クロスロード」という映画で「ロバート・ジョンソン」が録音に来るシーンなんかはドキドキして見てましたけど。あのシーンはいいですね。この時のスティーブ・ヴァイは若い。
今から考えたら、この1967-69年の3年間だけの一瞬の現象がずっと後に人生に影響してくる。どういうことかと考えてみると、人間は言葉には表せられないそれ以上の「何か」があると信じてしまった。どうもこれがいけない。これがすんなりと生きれなかった要因ではないかと、「ニューミュージックマガジン」の影響は多分にありそう。

2023.02.18追記 当時のとうようさんの考えの真髄
・・・・では、人間の頭の中を変えるとはどういうことか。私有財産制度に基礎をおくあらゆる既成道徳観、価値観を捨て、まったく新しいモラルを作り出すことだ。そのためには、他人の物を盗むとか、暴力をふるうとか、貞操を重んずべしというようなあらゆる道徳律から、美しい音楽がよい音楽だといった価値判断の基準まで全部ひっくり返し、人間の情念のパターンを一新せねばならぬ。
そういう、人間の根底から変えるような方向に沿った音楽は、ロックしかない。お説教めいたフォーク・ソング、プロテスト・ソングではダメなのだ。・・・・僕は実感としてそう思わざるを得なかった。・・・・・
「フォークからロックへ」(主婦と生活社)164ページ。






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